デザイナーズノート:バンケット

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 ゲームマーケット2013秋、Owl Worksとして初めて制作・頒布を行った。その第一作目がBanquet(バンケット)だ。初の試みだけあってその進行は試行錯誤と暗中模索の連続であり、それにまつわる泥臭い裏話は尽きない。(左の画像はデザイン案の変移)

  しかし、この記事では泥臭い話は別の機会に持ち越して「何を考えながらバンケットをデザインしたか」にのみ絞って書きたい。

 前後関係から位置関係へ

 まず最初にメカニクスの話をしたい。バンケットの根底にあるのは「順番と組み合わせに悩む」ことだ。自分が別のゲームについて考えていた時、それに使おうと考えていたカード案の一枚が「プレイされた時に発揮する効果」と「プレイされた後に発揮し続ける効果」の両方を持っていた。
 
 そこでふと思った、この種類のカードに相性や効率の差を持たせれば「それらを出す順番と組み合わせ」を悩ませることができるんじゃないか?
 
単純にモデル化するとこんな感じだ。例えばこんなカード群があったとする。
カードA: プレイすると1点を得る、以降にCを出す度に2点を得る
カードB: プレイすると2点を得る、以降にAを出す度に2点を失う
カードC: プレイすると3点を得る、以降にBを出す度に1点を得る
 もしも、このカード群が手札にAABBCとあり5枚すべてをプレイしなければいけないなら、どんな順番でプレイすれば最大の得点になるか? 5枚から3枚を選ぶならどう選ぶか? このパズルがバンケットの出発点だ。
 
 ただし、バンケットが新規性を持ったのはそこではなく、「順番にカードを横1列に並べていく」という仕組みだ。「順番」を単純な前後関係(言い換えれば時系列的な順番)ではなく、横1列に並べていくことで表現し、その位置関係に相性を持たせることにした訳だ。違いは後から操作して入れ替えることが出来るという点にある。この時点でバンケットの骨子が出来た。
 
 また、ここでようやく「宴会ゲーム」という世界観がゲームに追加されることになった。宴会の盛り上がりは参加者の組み合わせや席順に左右される。この動物たちもSNSに宴会の写真をアップロードして「いいね!」の数を競っているのだろう。横一列で並ぶのは少し変だが、それは長椅子(banquette)が一脚しかなかったことにしておこう。
 
 『位置関係の順番』を思いついたのは制作上の制限がきっかけだ。例に挙げたような仕組みでは、大量のチップや複雑な計算が必要になる。そこで、得点の計算は最後だけ行うことにした。そうなると出した順番をゲーム終了時まで何かしらの形で記録しておかなければならない。例えばそう、出した順番に横1列で並べておくとか? 何かしらの制約だけが創造的な方法を要求してくる。

ドラフトでなくては、駄目なのか?

 もちろん最初のメカニクスだけでは単なるソリティア(1人遊び)になってしまう。対戦相手がいることの意味を持たせなければいけない。自分がもっとも好きな相互作用の形は読み合いだ。この第一作にもその要素を入れようと考えていた。思うにアナログゲーム「読み・駆け引き」か「盛り上がる」のどちらかを持っていると良い。この二つの要素はアナログゲームであることを必要とする。
 
 次に相互作用のために読み合いの他にドラフトの仕組みを採用することにした。ドラフトはこのゲームで3つの大きな役割を果たしてくれる。
1)制限された中で自由にカードを組み合わせる
2)読みの材料を与える
3)情報と選択肢を制限する
   一つめは「制限された中で自由にカードを組み合わせる」役割だ、このゲームでは組み合わせの自由を確保しなければならない。ただし完全に自由であっても駄目だ。さっきも書いたようにある程度の制限があった方がむしろ創造的になれる。
 
 二つめが「読みの材料を与える」役割、読み合いや駆け引きをするには判断材料が必要だ。読みの材料がなければただのジャンケンになってしまう。ドラフトは相手が取ったであろう選択肢を絞りこむための情報を提供してくれる。
 
 三つめは、「情報と選択肢を制限する」役割だ。膨大な選択肢と情報があるゲームも、何の選択肢も情報もないゲームもクソゲーだ。ドラフトは情報と選択肢を適切な量に落としてくれる。では適切な量とはなんだ?
 
 シーナ・アイエンガーの「選択」に関する研究によると、人間は選択肢が7種類以上になると判断が困難になるそうだ。そこで自分は選択肢(ドラフトの枚数)を6つに設定することにした。頭をかすめた懸念の一つに「カードの内容を知らないせいで読み合いが機能しないのでは」という点があった。しかし、ドラフトによってこの懸念はだいぶ解決した。何故ならプレイヤーはカードをドラフト時に読むことができるし、そのラウンドは読んだカードしか出てこないからだ。
 
 ところで1と2の理由だけならドラフトである必然性はないように思える。実際、このゲームの軸はドラフトではない。こいつは補助輪のような存在だ。カードの内訳を把握しているプレイヤーであれば、ドラフトの代わりにシールド構築を行っても何も問題はない。何度か「最初にカードプールを11枚ずつ配り、そこから6枚の手札を作ってプレイ」という方式でプレイしたことがあるが問題なく機能した。
 

バランス調整は何のため?

 テストプレイで観察した点が主に3つある。
1)ゲームが終わった時に負けた理由がわかるか
2)対抗策は存在するか
3)常に使われるカード、使われないカードはないか
 「自分がこう考えてこう選択し、そしてその結果がこうだった」と言うフィードバックが必要だ。そうでなければプレイヤーがゲームに参加しているとはいえない。もっといえば、その選択が結果にどんな影響を与えるのか予測できるべきだ。プレイヤーはどうにかゲームを思い通りにしようと試行錯誤し、ゲームはその努力に応じたり応じなかったりする。そして生まれる「次はこうしよう」という感想や反省が「あと1ゲームだけ……」という気持ちに繋がる。
 
 「対抗策は存在するか」と「常に使われる・使われないカードはないか」というのは同じことを目指している。つまり、「常に正しい選択肢は作らない」という目標だ。相手の方針によって、場の状況によって、最適なカードは常に変化しなければならない。 

すべてはデザイン、アートワークも

 まずイラストについて。自分が描いた絵やデザインを公開するのはゲーム制作と同じく初めてだったが、幸いにも評判が良かった。今回はシャドウアートのような表現を試みたが、これはシンプルな絵柄によく似合う。テーブルに置いたくらいの距離だと本物のシャドウアートのようにも見えるのて気に入っている。
 

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 今回のアートワークで努めた一つの目標は「並べるのが楽しくなるようなカード」だ。ネズミの背景にはゾウ、ニワトリの横にはタマゴが描かれている。集めて並べることをカード自体が誘引するような、そんなコンポーネントが理想だ。カードゲームではぺけ氏の『アルパカパカパカ』は良い例である、可愛いアルパカのイラストはみんなにアルパカの首を長くすることを誘引している。『いぎょらっと』も……実に興味深い一例だ。

最後に

 細かい話を書けばいくらでも書ける。初期にはこんなカードがあっただとか、カードの枚数はこう調整しただとか……。カード1枚について1記事分書くことも出来るだろう。しかしここで書くのは、重要なことだけに絞っておこうと思う。なるべく手軽に小さく。
 
 一人で運営しているサークルだとは言っても多くの人に色々な面で手を借りている。ゲームについて相談を聞いてくれた人、テストプレイに付き合ってくれた人。今ペンタブに使っているステンレス芯を譲ってくれた人も。自分自身もゲームを作りたい人を応援したい。アイディアがあればぜひ聞かせて欲しい、手伝うのでいつかと言わずさっさと世に出そう。