読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

ボードゲーム界隈での興味深い4つの試み

アナログゲーム コラム/エッセイ

今回は最近ボードゲーム界隈で見られたいくつかの興味深い挑戦について紹介したい。

GitHubアナログゲームを開発する」
クラウドファンディングアナログゲーム資金集め」
アナログゲームの制作ハッカソン」
アナログゲームのダウンロード頒布」

GitHubアナログゲームを開発する」

Githubでアナログゲームを開発する | Open Design Games

 GitHubというのはバージョン管理システムの一種だ。複数のファイルを管理して「いつ」「誰が」「何を」編集したか記録しておき、ある時点まで状態を戻したり出来る。一般にはソフトウェアを複数人で開発する際に使うが、これをアナログゲームの開発に利用してみようというのが@fullkawa氏の試みである。

 @fullkawa氏が行ったのは自身が制作するdqz(a.k.a Xan)というアナログゲームのルールやカードをファイルとしてgithubで公開し、自由に改変バージョンの追加を許可するというもの。例えば、新しいカードを追加したりカードのデザインを変更したりして公開してもよい、ということだ。

 問題は、開発に無縁なユーザーにとってgitを利用するのが実質不可能なくらい難しいことだ。gitを利用する環境を整えてコマンドを理解すること自体が難しいのはもちろん、gitであることを活用するには適切なcommitの仕方など共同開発の考え方を学習する必要がある。初学者の心を折るには前者の理由だけで十分だろう。

 現実的にはソフトウェア開発で既にgitを理解していて且つアナログゲームにも関心がある層を対象にするしかないだろう。幸いなことに、(何故か)ボドゲ界隈とIT界隈は親和性が高いので決して非現実的でないはずだ。

 「クラウドファンディングアナログゲーム資金集め」

大人がハマる嘘つきゲーム!株式会社人狼によるオリジナル「人狼」制作プロジェクト
最悪の宴「オトーリバース」カードゲーム再販プロジェクト
SPACE ALERT 日本語版プレオーダー募集 : 実録:食卓遊戯密着大本営発表廿四時

 クラウドファンディングとはインターネットを利用した資金調達の方法である。要はネット上で「こういうサービス・商品を考えてます!そのための資金を提供してください!」と告知してお金を集め製品を作って投資者に還元するシステムだ。

 クラウドファンディングの本場、アメリカのKickstarterでは現在もいくつものボードゲーム・プロジェクトが資金を募っている。
Escape - a boardgame in the EDEN universe by Taban Miniatures — Kickstarter
Guilds of Cadwallon by CoolMiniOrNot — Kickstarter

 同人作品の中でも初期投資の額が大きいアナログゲームにおいて、初期費用を自己負担で用意する必要がないというのは大きな意味を持つ。が、それ以上に同人界隈にとっては「生産数の目安が確定する」という点がエポックメイキングかもしれない。在庫を抱えるのは同人作家にとって金銭的にも場所的にも、そして精神的にも負担だ。過剰に生産してしまい在庫と頭を抱えるか、それとも手に入らずに残念がるゲーマーを生むかの二択になりがちだ。最初から希望者の目安が確定していれば最も適切な生産数にすることが出来るだろう。

 問題ももちろんある。例えばオトーリバースのnakarx氏が言及しているように手数料の高さだ。日本でのクラウドファンディング最大手はCampfireだが、その手数料は2割と小さくない。生産数の増加やリスクヘッジによって生まれる利益がそれを上回るかどうか…は計算してみないことにはわからないが、良いこと尽くめとは行かないのも確かだ。

アナログゲームの制作ハッカソン」

 クラウドファンディングでも触れた「オト−リバース」を再び話題にするが、実はこのゲームはGame Jam Okinawaというゲーム開発のハッカソンで生まれている。ハッカソンとはプログラマーやデザイナーが協力し、数日程度の短期間に集中してソフトウェアを開発するイベントのことだ。原則としてハッカソンはソフトウェアを対象とするのでオトーリバースは唯一のアナログゲームだったようだ。

 オンラインで作業出来る範囲が広がっても、アナログゲームの制作では対面でのテストプレイは非常に重要だ。増してそれが制作側同士ならなおさら。対人ゲームは生身の人間と遊びながら作業できてナンボなのである。

 自分もアナログゲームを制作するハッカソンを目論んでいるので、機会があれば是非どんな風に進行していったのかなどお聞きしたい。

アナログゲームのダウンロード頒布」

 この前のゲームマーケットでは、サークルI was gameによって「メイガスホールデム」というカードゲームがダウンロード頒布された。pdfファイルを印刷して各自切り抜いて遊ぶというものである。

 商業の領域では例えばSirlin gamesがYomiなどを画像データ配布によってダウンロード販売を行っている。ちなみに今ならGraveとJainaのデッキが無料でダウンロードできるぞ! Sirlin Games - Store

 ダウンロード頒布は「いくつ生産すれば良いか」「生産のための費用をどうするか」という問題の、クラウドファンディングとは異なる解決アプローチだ。データを作成してアップロードするだけで良い。

 近年ようやく陽の目を見始めた3Dプリンターが普及するようになればカードゲーム以外のコンポーネントもダウンロード可能になるだろう。ちなみにカタンのタイルを3Dプリントする試みなどは既に行われている。(行った 見た 触った 3Dプリンタ! » lexTech:レキテク) しかしまだ金額的には現実的な手法とは言い難いのが現状だ。

まとめ

 どの取り組みも非常に面白い。そして今回紹介した4つの取り組みは決してバラバラな取り組みではなく、一つの大きな流れだ。どれもIT技術の流れをくむ、例えばクラウドファンディングとダウンロード頒布は同一の問題をIT技術によって解決しようとする2つのアプローチだ。ダウンロード頒布はGithubによる開発と深く関連していくだろう。ハッカソンもGitもソフトウェア開発の手法を転用する試みである。IT技術を始めとした新技術によってアナログゲームの世界がどう広がっていくか楽しみだ。

明日になればより素晴らしい未来が待っているだろう
- ダン・クエール