ボドゲーマーは算数も記憶もしたくない、あるいは消耗品としてのボドゲ

ボドゲーマーも人の子である。故に頭を使うのは嫌いである。

石を投げられる前に正確な表現を使おう。つまらないことに頭を使うのが嫌いなのだ。

 

対戦相手の行動から隠された意図を推理する。これは楽しい。
複雑に決められた計算方法に基づき自分の得点を電卓で計算する。これはつまらない。

数手先まで読んで自分の勝ち手段を考える。これは楽しい。
今までに出てきたカードの枚数を全部記憶して勝率を高める。これはつまらない。

 

頭を悩ませたいのはゲームの面白さと密接に関係している部分だけだ。それ以外の全てでボドゲーマーに頭を使わせることを避けなければならない。

ボドゲーマーは算数が出来ない

デザイナーが陥りがちな罠の一つは面倒な得点システムである。

得点よ、可能な限り単純であれ。我々は算数をしに来ているのではない。それは面白くないし純粋に面倒だ。リプレイする確率を下げるし説明書を読んだ時点でゲンナリされる。13 * 2 + 21 + 6 * 3 + 7で俺のスコアが何点だって? 知るか!

得点が20を超える計算を必要としただけで、既に厳しい気持ちになる。まして軽いゲームを自称しているのなら何をかいわんや。というより、軽いゲームで得点が20を超えるのは何かの間違いではないか? 記録用紙を同封するとかそういう問題じゃないぞ。

スコアボードで逐一加点をしていくのは良いシステムだ。常に自分がより多く得点を得るにはどうすればいいか、という面白い課題に集中出来る。今、自分が何点で相手と何点差があるのかを考えるのに指を折る必要がない。

得点システムの複雑さは単に計算という手間が増えるだけでなく、先の見通しも悪化させる。そしてそれは時間をかけて計算していけば解決できるため競技性にも繋がらず、カジュアルなプレイでは単にユーザー体験を悪化させる要因でしかない。ボドゲーマーに3桁の算数をさせるのは明らかな間違いだ。

得点計算を非常に簡易なものに出来るならいくらかのゲームバランスを犠牲にすることさえ割に合ってしまう。複雑な得点計算を要求するゲームがゲームバランスのひび割れを発見されるほどリプレイされない可能性の方がずっと高いのだから。残念なゲームは壊れるほどリプレイされないのだ。

ボドゲーマーは記憶できない

陥りがちなもう1つの罠が、記憶の要求である。最初にカードのカウンティングを例としたが、カウンティングを前提としたゲームは言うまでもなく厳しい。だが、そうでなくとも記憶を保持しておかなければならない処理が多いゲームも十分に厳しい。

例えばターンの最初に発火した処理をターンの最後に忘れずに解決しないと行けない場合は記憶を保持しておく時間が長い。恐らく頻繁に処理を忘れられてしまうだろう。発火した処理は出来れば間髪を入れずに解決したい。

ちなみに文章を書く時にも同様で、一つの話題を出したらそれが完結するまで他の話題を出さないことが好ましい。また、センテンスが長くなり過ぎることも避けたい。人類の儚い記憶力に優しくしよう。

積みゲー、ワンプレイゲー

所有されたボードゲームは3種類に分けられる。何度も遊ばれたゲーム、1度だけ遊ばれたゲーム、そして一度も遊ばれてないゲームだ。

諸兄らにおかれては積みゲーが大量にあることは周知の通りである。しかし1度だけ遊ばれたゲームというのは多い。つまり、「一度で十分だと判断されたゲーム」だ。なんだか胃が痛い話だなぁ…。

要点から言えば、「繰り返し遊んでもらえればハマる、奥深い!」ゲームなんていうのは空しい売り文句だ。研究熱心なゲーマーの情熱に耐えるゲームバランスは確かに素晴らしい。研究しがいのある奥深さも魅力的だ。

ゲームの耐用プレイ数

ゲームの耐用プレイ数はデザイナーが期待するよりも遥かに短い。

はっきり言ってしまうとゲームのひび割れが発見されるほど遊ばれるゲームはホンの一握りだ。ほとんどのゲームはそこまでに至らない。5度6度と繰り返して遊ばれるゲームは既に飛び抜けて優秀な部類である。

故にゲームは一度目のプレイでその魅力を感じ取ってもらわねばならない。良いから数回プレイしてくれ、良さが分かるから! だって? 知るか!

得点計算の話でも触れたが、最初に楽しさをわかってもらえるなら奥深さを犠牲にする価値だってある。冷静に自分が最近プレイしたゲームを思い出して平均的な耐用プレイ数を考えてみよう。研究してゲームバランスを崩壊させたゲームは何割だ?

我々は常に何度遊ばれても面白さを保ち続けるゲームを追求してはいるものの、現実的な問題としてはリプレイのハードルを下げることの方がずっと重要である。遊ばれないゲームの奥深さなど何の意味もないのだから。極端な話をすれば5、6回のプレイに耐えれば十分だというデザイン方針も、決しておかしなことではないはずだ。